生存本能を超越した食欲の先に見えたのは。

本作は非常に硬派な、科学に基づいた珍味の成立過程に関する考察である。
しかし、とっつきにくそうなどという心配は無用。
今回、議論のテーマとなっているメニューは、ふぐの子糠漬けだ。
ふぐが毒を持っていること、そして美味であることは誰もが知るところであろう。
ふぐの子糠漬けは、毒のない可食部ではなく、毒性の強い卵巣部分を無害化させて作る珍味である。
ふぐの子糠漬けの成立過程を考察する作者の視点は鋭く、それでいてユーモラス。
なおかつ、食べることに対する愛と、食べるということに執念や狂気とも呼称してしまえそうなほどの愛と情熱を傾けた先人たちへの愛に満ちている。
作者が深い考察の果てに食欲の先に見たものを、是非あなたの目で確かめてほしい。
中毒性はあれど、毒性は皆無であることを私がここに証明しよう。

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