何気なく目にする隙間に犇くのは。

隙間というものはどこにでもあるもの、生み出さずとも生まれるものである。
わずかな隙に潜んだ何某かは、人々の心の隙間が広がったタイミングで視界に入り込み、ここではない世界へと甘美に手招きする。
その声に耳に貸してしまったが最後、今度はあなたが隙間に潜む何某かになってしまうかもしれない。

ところで、本作収録の短編はいずれも余韻を残す結末となっているのだが、解釈に幅を持たせているということは、そこにも隙間が生じているということにはならないだろうか。
読了後の方々は、その隙間を狙う何某かに注意してほしい。