食いたいものも食えないこんな河豚の子じゃPOISON
- ★★★ Excellent!!!
言わずもがな、河豚という魚には毒があります。
中でも卵巣にはテトロドトキシンという猛毒がたっぷりと含まれ、その毒性は青酸カリの1000倍、人間なら1匹で10人の中毒死が可能といいます。(北海道庁HPより)
そんな猛毒の河豚の卵巣を調理して食べる、『ふぐの子糠漬け』なる珍味が石川県に存在します。
徹底的な塩漬けと糠漬けにより無毒化に成功していますが、そのメカニズムについてはいまだに不明であるとか。そのため、調理法についてはその“解毒成功ルート”が厳守されています。
しかしそもそも、この料理はどういう過程や歴史を経て現代に伝えられてきたのか。本エッセイではその謎について考察します。
偶然から生まれたのか、刑罰用として用いられたのか、純粋な「食欲」から追い求められたのか……その真相はわかりません。
しかしながら、当時の人々はその「食欲」の向こうに何を見ていたのか……そこに思いを馳せることは浪漫であり、引いては世に存在する多様な食文化への理解の萌芽でもあります。作者様の文章も丁寧で読みやすく、真摯な言葉には体重が乗っているようで、短編ながらも読み応えがありました。
寒い季節、これから河豚を食する機会があれば本エッセイをお供に、先人たちの労苦と情熱に思いを馳せながらひれ酒一杯など、いかがでしょうか。