薄紫の追憶から、零れ落ちた一滴のかがやき
- ★★★ Excellent!!!
阿蘇の高原の冴えた空気の片隅で、梅雨の時期にひっそりと咲く薄紫の花がある。
冷たい雨粒に打たれながらも、薄い花びらを閉じることなく、必死に開こうとするその姿。
決して派手ではなく、むしろ見落とされがちな存在でありながら、そこに確かに在る。
それは、強さを誇示しないまま生き延びてきた、ハナシノブという花の姿だ。
読み進めるほどに浮かび上がってくるのは、壊れやすさではなく、むしろ感情の粘り強さである。
否定されることを恐れながらも、それでも言葉を残そうとする人々。
簡単には折れない思いが、花の名を借りて静かに語られていく。
夢のような比喩に包まれながらも、この物語が見つめているのは現実だ。
誰にも気づかれない場所で、それでも咲こうとする意志。
その確かな存在感こそが、この作品の真髄である。