残酷なシステムの中で、一輪の花と言葉が繋ぐ奇跡の物語

「司書」という言葉に、こんなにも残酷さと美しさが同居する物語があるのかと驚かされました。

他者の記憶を抱え続けることで、自分の輪郭が少しずつ削れていく少女。その傍らで、彼女を一人の人間として見ようとする少年の必死さが、静かに胸に残ります。
魅力は、独創的な設定だけではありません。

季節の移ろいや花言葉が、二人の心の揺れをそっと照らしていて、読んでいるこちらまで息を潜めてしまうような繊細さがあります。
「削稿」という逃れようのない仕組みの前で、言葉が、そして小さな約束がどんな形を結ぶのか。
最終話で描かれるハナツメクサの色彩に触れたとき、きっと誰もが立ち止まると思います。