奇怪な事実を語る者は、いつだって狂人めいている

ホラーに「狂人」と聞くと、ワクワクとしたものを感じてしまいます。
理性を失う前の姿、狂ってしまったとされる背景事情、そして普段の狂った言動、そして奇怪な真実との整合性。
そこに悲劇が感じられ、納得して同情し、そして物語を劇的に変えるカギとなる存在、それがホラーにおける「狂人」です。

本作は、そんな「ホラーにおける狂人」を見事に描いています。
彼が狂ってしまう前の栄光ある姿、そして狂う原因となってしまった悲劇、落ちぶれ果てた現在の姿、それでもなお真実を見つめ続ける精神性。
まさに「かくあるべし」な狂人です。

そんな見事な「狂人」によって回される本作もまた、コンパクトでありながら二度三度と読まされる技巧派な一作というわけです。
どうぞ、皆様も本作のお手本のような「狂人」、トム・トレンブル氏の活躍を是非ご覧ください。

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