殺人事件、凶器は「死神」。

死神の仕事は、ひそかにルールを設定し、これに触れた人間の命を奪うこと。しかし、死神の陸斗が受け持つことになった小さな集落で、奇妙な事態が起こる。何者かが死神のルールを見破り、特定の相手を死神に殺させているという。人間でありながら陸斗の友人となった修司は、陸斗の頼みで、事情を調べるべく集落で生活することになるのだが……?
殺人の凶器として「死神」を利用するという、異様なミステリー。陸斗はルールの変更をこころみるが、彼と修司の困惑をあざ笑うように、何者かが陸斗を「動かす」。小さな集落は、死者の続出に震撼。疑心暗鬼に陥る人々の間で発生する小さな事件は、果たして偶発的なのか、それとも? 人命を左右するルールを聞かされ、かつ死神の事情を住民に明かすことができず、重い苦悩をひとりで抱え込むしかない修司。読み進めるにつれ、ずっしりと重い綿で首を絞められていくような息苦しさが立ち込める。これ以上事件が続いてしまったら、この集落はどうなってしまうのだろう。死神をいいように操る人間がいていいものだろうか。死神とは友人である一方で、人の命を奪う話を相談され、うかつな返答もできず鬱々とした気分に追い込まれる修司の孤独も、事件に大きな影を落とし、修司の心が壊れてしまう前に犯人をあばくことはできるのかも気になる。本レビュー投稿する時点でまだ結末の形は見えないが、この異色な連続殺人の真相が楽しみでしかたがない。

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