『ねーうしとららん』は、誰もが知る十二支の昔話を、神々の会議という「決め方」の場面から組み替えて見せる。担当神が得意げに「ねー、うし、とら、らん」と読み上げた瞬間、会議の空気が一段冷える。この違和感を起点に、神鏡の映像で「らん」の正体を追っていく流れが明快で、読者は笑いながら不安へ引き込まれる。
特に印象に残ったのは、夜の映像で卵の表面に大きな眼が現れ、殻が横に割れて長い舌がネズミを絡め取り、殻の中へ連れ去っていく場面だ。可愛い干支の世界に、捕食の生々しさを一瞬だけ混ぜることで、神々の「これはマスコットにしてよいのか」という議論が急に切実になる。そこへ「信仰ポイント」など俗っぽい仕組みまで淡々と提示され、神ツッコミが入って、笑いが戻る。この緩急が作品の持ち味だと思う。後編でも「ねー」の正体で同じ型の驚きを重ね、最後に「辰」の見落としまで置いて締める手際がいい。短いのに、設定とオチがきれいに残る。
発想力が凄すぎる! 「卵」というスタートからよくここまで……と舌を巻かされます。
十二支を決めるレースが行われ、神様たちがその順位を改めて見ていきます。
出てきたのは「ねー、うし、とら、らん、たつ、み」という。普段耳にするのとは「何かが違う」ものに。
四番目の「らん」とは何か。それは卵のような姿をしているが、普段は動かず、突然ゴロゴロと高速で転がって移動し、更には一日に一回分裂して「二倍の数」に増えるという。
そんな「クリーチャーとしか言えないもの」が神様のレースに紛れ込むことに。
いくらなんでも、こんなバケモノを十二支に入れるわけにはいかない。でももう発表しちゃったけどどうしよう……と神様たちは困ってしまいます。
そして一計を案じて、と「普段知っている十二支のメンバー」が出てくることに。
なんとも、すごい想像力だと作者さんの手腕に驚かされました。
そこから更に「二段階、三段階のオチ」に繋がっていき、「おおお!」と読者はひたすら驚嘆させられます。
たしかに十二支って、普段知ってるのも「なんか妙なの」混じってるもんねえ、と。そういうツッコミまで入る感じ。
とにかく最高でした! サクっと読める長さなのに、圧倒的なアイデア密度。ビリビリと来るようなすごい作品なので、読まなきゃ絶対損です!!!