怖いのに理解できてしまう——本気の愛情が生む危うさ

この作品は正直、かなり危ないです。
思考の行き着く先が鋭すぎて、読む側の状態によっては心を引っ張られるタイプの物語だと思います。

ただし同時に、冷静に俯瞰できる人にとっては、かなり多くの「学び」を含んだ作品でもあります。
物語が描いているのは、「本気で何かを愛してしまった時、人の思考はどこまで極端になりうるのか」 という、とても人間的で、目を背けにくいテーマです。

主人公の思考は、極端ではありますが、"愛情"という感覚の延長線上にあり、完全に他人事として切り捨てられない説得力があります。

だからこそこの作品は、「分かる」と感じた瞬間から一気に怖くなる。
理屈が通ってしまうからこそ、否定もしきれず、読み心地は決して良くありません。

それでも、この物語が強く刺さる人は、 きっと「何かを本気で愛したことがある人」だと思います。
愛情が深いからこそ生まれる独占欲や境界意識、その危うさを、ここまで徹底して描いた作品はなかなかありません。

万人向けではありませんし、軽い気持ちで読むと火傷します。
ですが、創作・表現・愛情の持つ危険性について考えたい人には、 強く印象に残る一作だと思います。

最後に一言、素晴らしい!!

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