王道を疑う人向けの、かなり尖ったファンタジー

本作は、いわゆる「王道ファンタジー」をそのまま楽しむ作品ではなく、王道そのものを俯瞰し、問い直すタイプの短編です。
勇者と魔王という定番の構図を出発点にしつつ、物語の進み方や語りの在り方を意図的にずらし、読者の先入観を揺さぶってきます。
テンポ良く進む会話劇と、メタ的な視点による風刺が特徴で、創作論やジャンル批評が好きな人には特に相性が良いでしょう。

一方で、純粋な冒険譚や勧善懲悪を期待すると戸惑うかもしれません。
好みは分かれますが、発想力と切れ味は確かです。