檻の闇で交わす優しい嘘が、少年と白子を救う、星空の牢獄読後熱残る1本だ

 『嘘吐き勇者よ。死んではならない』は、目覚めた瞬間から読者の足元をすくう。見知らぬ天井、湿った埃の匂い、手枷と首輪、そして出入口のない檻。さらに身体は幼児に戻り、肝心の「自分の名前」さえ抜け落ちている。状況の異常さを重ねるのに、描写は手触りが具体的で、恐怖が空想に逃げない。鎖の音がうるさいほど、現実感が増していく。

 そこへ現れる白い子供が、この物語の温度を決める。美しいのにどこか怯えている。優しいのに何かを隠している。灯りを分け、飴を渡し、水を汲む。ただ、スープだけは渡せない。その不自然さが、単なる「意地悪」ではなく、別の圧力を匂わせて先へ引っ張る。

 パンの回が印象的だ。白い子供が息を切らして階段を駆け下り、長いパンを差し出す。少年は涙がにじむほど夢中で齧りつき、次の瞬間、自分の中に芽生えた疑いを押しとどめて、ちぎったパンを相手へ返す。その時の言い方がいい。「1人じゃ食べ切れない」と、あえて嘘をつく。生き延びるための嘘ではなく、相手を生かすための嘘だ。ここで題名の「嘘吐き」が、軽い悪徳ではなく、勇者の手つきに変わる。子供が小さく「うん」と答える一言も、閉じた牢の空気を少しだけ動かす。

 16話という尺の中で、檻の内側の屈辱と、檻の外側の孤独が、同じ重さで描かれていくのが強い。救いの形は派手な力ではなく、灯り、食べ物、タオル、鏡といった小さな道具に宿る。だからこそ、次に来る「嘘」が救いになるのか、刃になるのか、読者は目を離せなくなる。

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