姫が作者で俺だけが♡。読書通学の秘密共有で二人の恋心が一気に加速する!

 読み始めの掴みがうまい。寝坊助の伊東翔が、通学電車で「全校生徒憧れのお姫様」姫野=クラリス=夢叶と遭遇し、ただ目の保養で終わるはずの朝が、じわじわと日常を崩していく。語り口は軽快で、主人公の独り言が多いのに状況が見えやすく、読者が置いていかれない。学園の眩しさと、底辺WEB作家を毎日♡する「地味な習慣」が同じ画面に乗っているのが、この作品の面白さの芯だと思う。

 第2話の校門が刺さった。姫野さんが待ち伏せし、頬を赤くしながら「わたし、じ、実は……しょーとけーきという名前で小説を書いていまして」と告げる場面で、設定が一気に反転する。翔は「俺だけが♡する側」から、作者本人に直接感想を渡す唯一の読者に変わる。ここで恋愛の勝ち負けではなく、「書き手が読者を欲しがる切実さ」と「読者が応えたくなる気持ち」を正面から作っているのが良い。秘密の共有が、距離を縮めるだけでなく、二人の関係に役割と目的を与えている。

 10話まででも、ファミレスの感想会、ゲーセンのぬいぐるみ交換、プリクラの小ネタ、牛丼屋デビューのズレた可愛さ、そしてボウリングの勝負提案まで、デート回が「ただ甘い」だけにならず、毎回ちょっとした事件で転がっていく。姫野さんは完璧なお姫様ではなく、陰っぽさや世間知らずが混ざることで、翔のツッコミが生きる。続きでは、秘密が広がった時の学園側の反応と、姫野さんの創作がどう変わるか?楽しみ。

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