迷信と科学の暴走を笑いに変え、狐の嫁入りで胸のこわばりがふとほどける。

 『明日天気にさせてやる』は、結婚式前夜の焦りを、迷信と理屈の小競り合いに変えて走り切る全3話だ。てるてる坊主を量産して祈り倒す梨衣奈と、和やかに収めたい拓の温度差が、軽妙な会話で次々に火花を散らす。

 中でも効いているのは、梨衣奈が『晴れ道具』として下駄を持ち出し、訪問販売の話まで添えてしまう場面だ。値段は4万9千円。拓が思わず声を荒らげ、善人になり切れない本音がこぼれる。その直後に、梨衣奈の無邪気さがまた一段ギアを上げるから、読者は笑いながらも、この2人の生活の輪郭を掴める。

 後半は『科学的に晴れさせる』の名目で虫よけや乾燥剤に飛躍していき、最後は雨の中で光が粒になって跳ねる天気雨へ着地する。晴れか雨かの二択を外して、『いい天気』の意味だけを少しずらす締めがきれいだ。晴れ舞台が思い通りにならなくても、目の前の景色を受け取る余白は残る。その余白が、この短編のいちばんの祝福だ。

注……僕は愛媛の松山出身ですが、狐の嫁入りも時々使います。松山だと、空が明るいまま雨が来ると、どこかで祭り事が始まったみたいに見える時があります。

その他のおすすめレビュー

ひまえびさんの他のおすすめレビュー375