概要
それは、美しく優しい手の恋人が消えた夜の事。
"あれは、菜の花畑が青紫色の夕暮れに沈む頃・・・"
子供の頃に出会った不思議な記憶を、美しく優しい手を持つ恋人に撫でられながら語り出す。
子供の頃に出会った不思議な記憶を、美しく優しい手を持つ恋人に撫でられながら語り出す。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!手の匂いが鍵、狐の嫁入りと恋が裏返る夜。青白い灯り、菜の花の香が残る。
ましら 佳さんの『美しく優しい、可愛い手』は、触覚と匂いを入口にして、恋のぬくもりを怪談の湿りへすっと滑らせる。手という小さな部位だけで、相手の人格や距離の近さまで立ち上げてくる。その書き方がまず巧い。
春の小糠雨に濡れた菜の花畑で、青白い光の列がしずしずと進んでくる場面が僕の胸を打つ。懐中電灯ではなく、蛍みたいに揺れる温かな光。拍子木の乾いた音が空気を割り、白無垢の花嫁が柔らかな声で「手土産」を口にした瞬間、甘い匂いの景色が一気に牙を持つ。怖さは大声ではなく、言葉遣いの丁寧さと、にこやかな目元の赤で来る。
その怪しさを、作品はただの恐怖で終わらせない。恋人の指先が頬を突つく軽さ、…続きを読む