忙しさに追われる運び屋、ことわざ通り猫の手が迷子を救う軽快宇宙SF小品
- ★★★ Excellent!!!
宇宙運送業の現場は、遅れがそのまま信用の傷になる。冒頭でセレスティナが「ルート最適化」を相棒AIリリスに投げ、ことわざの説明に「猫の手なんて役に立たない」と返すやり取りだけで、この物語の調子が決まる。忙しさに苛立ちながらも判断は速く、言葉は軽いのに仕事の重さが伝わってくる。読み手は、運び屋の背中に張り付いた時間の圧を、会話のテンポで追いかけられる。
カルディアⅡで積み荷スキャンを端折ったことが裏目に出る場面が面白い。リリスが「コンテナ内に小さな生体反応」と告げ、セレスティナが「虫じゃないわよね」と身構え、No.4を開けた瞬間に現れるのが子どもではなく子猫である。この一段の転がし方が巧い。しかもその子が後ろ足で立ち、前足が人間の手のように見えることで、お題の「手」を視覚的な驚きとして回収してくる。翻訳にかけると「猫ではなくキャルム族」と分かり、宇宙の広さが説明ではなく出来事で示されるのも気持ちがいい。