概要
宮仕えは辛い。月の姫に恋をすれば、なおさら辛い。
近未来の日本。
富士山が、また噴こうとしている。
それは科学的には純粋な地質現象だ。
だが同時に——かぐや姫が去ったあと、帝が不死の薬を焼いた山でもある。
千年読まれ続けたその煙が、いま災害として目を覚まそうとしていた。
地震や火山に「古典文学のせいですね」と真顔で言う役所、災害叙述管理局。通称『ナラ局』
そこに勤めるしがない公務員・少弐綴に下った任務(業務)は、噴火を止めることでも、物語を書き換えることでもなかった。
日本最古の物語の終わりに、たった一行の「異聞」を差し込むこと。
ただ、それだけ。
南極の氷から打った刀を腰に、綴は『竹取物語』最後の夜へ跳ぶ。
月の迎えが地上のすべてを無力化する、その只中へ。
そこで彼が見たのは、教科書のどこにも書かれていない、かぐや姫だった
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