概要
『もしも』の世界線の、その先へ。俺たち二人で生き直す。
五十五年経っても、忘れられない手触りがある。中学の修学旅行の帰り道、体調を崩した初恋の少女・ミユキから受け取ったバッグの、拍子抜けするほどの軽さ。彼女はそのまま転校し、二度と会えなかった。
七十歳のトオルは、軽度の認知症と診断された。家族に見守られ、何の不足もなく、穏やかに消えていく未来。それが、どうしても受け入れられなかった。
——あの子、『楽園』に入ったらしいぜ。
『楽園』。ミユキは五十五年前、十五歳のままそこの住人になっていた。
トオルは決意する。妻に、家族に、そして自分自身に別れを告げ、彼女に会いに行くことを。
けれど、五十五年待っていた彼女のもとへ辿り着いたとき、トオルはまだ知らない。
『楽園』で、自分たちが何を選ぶことになるのかを。
これは、止まった時間をもう一度動かそ
七十歳のトオルは、軽度の認知症と診断された。家族に見守られ、何の不足もなく、穏やかに消えていく未来。それが、どうしても受け入れられなかった。
——あの子、『楽園』に入ったらしいぜ。
『楽園』。ミユキは五十五年前、十五歳のままそこの住人になっていた。
トオルは決意する。妻に、家族に、そして自分自身に別れを告げ、彼女に会いに行くことを。
けれど、五十五年待っていた彼女のもとへ辿り着いたとき、トオルはまだ知らない。
『楽園』で、自分たちが何を選ぶことになるのかを。
これは、止まった時間をもう一度動かそ
応援頂き、ありがとうございます!頂いたギフトは、創作活動に有難く活用させて頂きます。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!全てが満たされた空間で、人は何を望むのか。
もし、全てを与えると言われたら。あなたなら、何を望むだろう。
トオルが生きていた現実は、すでに、満たされすぎた楽園だった。それでも彼は、その楽園を捨てて、もうひとつの楽園へと向かう。非人間的なまでに整えられた、その場所で。彼は何を追い、何を見るのだろうか。
ひとりの女を地上に残し、家族を引き裂いてまで掴みにいった、罪深い再会。その上澄みにすぎないはずの光や風や、ささやかな痛みまでもが、なぜこんなにも、尊く感じられてしまうのか。ぜひ、読んで、味わってほしい。
人の望みは、千差万別だ。満たされてなお、人はそれでも、何かを欲しがる。
この物語は、本当に遠い未来の話なのだろうか。私…続きを読む - ★★★ Excellent!!!永遠よりも共に過ごす時間を選んだ二人
五十五年前に別れた初恋の少女に会うため、七十歳のトオルが仮想世界「楽園」へ向かう。
一見、失われた初恋を取り戻す純愛物語のよう。
でも、読み終えてみたら、本作が描いているのは単なる再会でも、若返りの夢でもありませんでした。
特に印象的なのは、「楽園」が何でも叶う場所でありながら、そこに留まるだけでは本当の救いにならないというところ。
永遠に若く、美しいままでいられる世界。その中で、二人が何を選び、何を手放し、どう時間を動かしていくのか。恋愛小説でありながら、人生の終わり方そのものを問われているような読後感があります。
初恋、老い、記憶、創作、そして有限であることの尊さ。
静かな文章の中…続きを読む