波の幻想の彼方にある光。

海は、空の彼方にある宇宙の広がりと
同じぐらい未知の世界であると聞いた事が
ある。この地球上の約七割を占める
巨大な水は、安らぎや糧を齎すだけでなく
時には抗う事の出来ない脅威ともなる。

海は黙示して、只波の音のみ響かせて。
 足元には瀕死の魚が口を開けて、乞う。

海の彼方へと投げてやるが、自らは一体
何を乞うというのだろうか。

   影が、纏わりついて離れない。

大海原は根源的な恐怖を齎すが。もう既に
それも荒濤に洗われて奪い去られて行く。


作者の幻想的で不穏な寓話は、畏ろしくも
厳かな空虚に紛れ、圧倒的な感慨と映像を
呼び起こす。
       海は、恐ろしくも優しい。

 万物の母なるもの。

これは絶望の先にある光の物語。

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