あと何回、僕は『その夢』を見続けられる?

 自然界の過酷さ。それを強く感じさせられる物語でした。

 同じ夢を「9回目」まで見たと覚えている。
 主人公は一羽の鳥。言わずもがな、過酷な自然の世界で生きる存在。

 ひなとして親に育てられ、これから巣立とうとする瞬間を迎える。その時までに同じ夢を九回見た。

 これから成長して巣立ち、やがては渡りの時を迎える。
 この自然の中で生きていること。その命が続く限り、また「同じ夢」を見られることがあるかもしれない。

 つまり、彼にとって「夢を見る」ということは、自らの生をどうにか繋げているという証明でもある。
 十回目は存在するか。更に先は? 自分の子供たちは一体何回分の夢を見られるか。

 消えていった命。今も傍にある命。そして自らが存在しているという現在。

 命。自然。その力強さと儚さをしみじみと感じさせられる、心に沁みる物語です。

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