本作は昭和家電の思い出を語るエッセイです
作者さま自らの体験は現代から見れば色あせた「セピア色」かもしれませんが、しみじみと家電の、昭和の思い出を描かれています
今の時代だと「新しい家電」で感動もないのではないでしょうか?
新しいものがくる、それで生活に潤いが生まれる
今だとスマホとか、AIとかになるかもしれませんが、昭和の新しい家電はそれこそ生活を一変させるものでした
例えば洗濯なんて、洗濯板で手洗いだったんですから!
洗濯板、私の子どものころにはまだ使い古されたそれがあってそれで洗濯機では洗えないものは手洗いもしていました
それがもう洗濯板なんて民俗博物館にでも行かなければないほどに、今は洗濯機が当たり前ですし、それでなんでも洗えるんですから
家電のない昔のこと、家電が来た驚きを追体験しつつ、自分の子どものころはどうだったかな? と、こんなふうについつい自らの思い出も手繰ってしまう、そんな滋味深いエッセイとなっています
読んでいてとてもワクワクしました。
テレビ。今では当たり前になり過ぎて、むしろ「テレビ離れ」とか言われて前時代のように扱われ始めているもの。
でも、これが世の中に現れた時には、いかに多くの人々の心を震わせたか。
本エッセイではそんなテレビなどの家電がそれぞれの家庭にやってきた時のエピソードが語られていくことになっていきます。
テレビというものが家に来て、「少年ジェット」だとかの番組が流れるのを見た時。その時の感動はいかほどのものだったろうかと、「その時」を想像してすごく心を揺さぶられるものがありました。
テレビの中には人が入っているんじゃないかとかも想像しちゃうし、中で人が動いていて喋っているのがリアルタイムで聞こえてくるとか、本当に改めてすごいことなんだな、と実感しました。
そして洗濯機やお風呂など。今の時代で便利になったものと、前の時代の「五右衛門風呂」とかが持つそれ独特の味わいなど。
とにかく「今の時代」では当たり前になっているからこそ、改めてそれを見つめ直してみたくなりました。
身近にあるもののありがたみがわかり、「当たり前の日常」が愛おしく感じられるエッセイでした。