一月前にこの「近況ノート」に「いい加減にしなさい」というタイトルで江藤農林水産大臣の余りにすっとぼけた記者会見についてコメントした。それから1月経って、相も変わらずつまらないことを「受けを狙って」失言した挙句に「辞任」した。別に先見の明があったと主張するつもりもない。あの時点で「このおっさん、駄目だ」と思った人間は沢山いただろうし、逆になんで1月も持ったんだ、と疑問さえ湧く。
不思議に思うのはどうしてこんな人間が大臣になったのか、ということだ。いや、人間として否定しているわけではない。正直言って、彼はどこにでもいる普通のおじさんだ。おそらく、同僚からは「実はつきあいの良い奴」なんだとか言われ、若い女の子は「ちょっとパワハラおやじ(女性記者との接し方を見るとおそらくは)」と敬遠され、それでも中小企業の管理職として一家を養う程度のおっさんで、その限りでは大して害はない。
問題は大臣にしてはいけないこんな人物をどうして大臣にしたかということだ。能力もなく、「絶妙のタイミングで失言する」そんな人間を大臣、いや議員にすることは本人のためにも国家のためにも全く望ましくない。彼の退任会見を見てもその意を強くした。彼は全く反省していない。少なくとも農林水産大臣としての職務は全うしたつもりでいて、後任に「自分のやってきたことを」伝えようと余計なことを考えている。彼の反省は「迂闊に余計な受けを狙ったこと」にしかない。問題は失言ではない。物事の考え方、問題解決の姿勢、全てが「駄目」なのである。
そしてその一月の間に「米」に関して更に愚かな話が出た。「どこぞ」のJAが「ご飯一膳、たった49円です」といってコンビニの商品と比較して「安い」と主張した挙句、炎上したというニュースである。実はそれよりも随分前にある農家へのインタビューで、「都会では若い女の子がグルメだとか言って何千円もするものを平気で食べているのに、農作物が高いってどういうこと」みたいな話をしているのを聞いたことがある。
心情はわかるが、そういう事を言っていてはだめなのだ、と思う。世の中のビジネスの仕組みにおいて「若い女の子が何千円も出す」食事は絶対と言って良いほど長続きしない。そんなアブクと比べて不満を言っていること自体既に問題なのだ。そしてJA「どこぞ」はその「感覚」をそのまま口にした。そして全農の会長はそれを裏付けるような発言をしている。
馬鹿じゃないか、と思う。
僕は米や卵が値上がりする前は、朝ご飯に卵かけご飯を食べていた。雑な計算だが、米は今の価格の半分、25円、卵は6個入り200円くらいだったので33円、諸々併せて60円くらいである。今だとそれが100円を少し超す。それでもコンビニのパンより安いのはそうかもしれない。
僕は今レーズン入りオーツの牛乳を食べている。輸入品のオーツは500グラム250円、レーズンは500グラム700円、牛乳1リットル250円(実際はこれよりも安い)だとして、オーツ30グラム、レーズン10グラム、牛乳100ccを使うと15円+14円+25円計54円で朝食が食べられるのである(その上、光熱費もいらないし、栄養のバランスも望ましい)だから高いし、代替は存在する。蕎麦だって、うどんだって、パスタだって米より安い。自明である。(物にもよるがすべて1食分では30円から50円程度で買うことは可能)
いや、なにも米を否定しているわけではない。主張が愚かだと言っているのだ。愚昧が威張るところは滅びるのは仕方ない。長続きしないからだ。このままこんな愚かな人たちに任せていたら、日本の農業はほんとうに滅びてしまうだろう。もう一度言いたい。農業を守ることと今の農業団体や、一部の硬直化した農民を守ることは決して同義ではない。食料自給率をネタに補助金をせびり、ろくな改革をしないことこそ農業の衰退の一番の原因である。決して農業への所得配分を否定しているわけではないが、米価が倍になることを「当り前だ」とする現状はあまりにも馬鹿げている。そんな主張をする政治家も団体もこの国にとっては害ではないのか?
昔、半導体は「産業の米」と言われた。その「米」を農協の方々は真剣に考え守ろうとしただろうか?僕も食料自給率を高めるのは必要だと思っているが、それは現状に胡座をかくことを許すことではない。半導体の世界では明らかに今の農協とかよりメーカーは必死に世界と戦いそして敗れた。そんな覚悟もない政治家と圧力団体で果たして日本は農業を守れるのか?日本の未来はこのままでは暗い。
次の農林水産大臣にはぜひ頑張って欲しい。前の農林水産大臣と同じ二世議員で一部にはひどく悪く言われているが、まあはっきり言って前よりはだいぶマシそうだ。だいたい二世議員だと悪口言っている人たちは前の「二世議員総理大臣のファン」が多く、こういう人たちもどうなんかなぁ、と思っている。揚げ足取りにめげずに農政改革を貫いてほしいものだ。