人斬り以蔵、彼は鬼でも修羅でもなく、ただの人であった
- ★★★ Excellent!!!
「人斬り以蔵」こと岡田以蔵、彼の人物像を語る手掛かりとなるのが、彼の所属していた土佐勤王党が崩壊する切っ掛けとなった「自白」です。
彼は女ですら絶えたとされる拷問にも泣き喚き、あっさりと口を割って仲間の名前をペラペラ喋ってしまったのです。
これには土佐勤王党の首領であった武市瑞山も、「以蔵は誠に日本一の泣きみそであると思う」と酷評される始末です。
また、勇猛なようで実は臆病であり、仲間内からそのことを欠点だと惜しまれたという記録も残っているようです。
「人斬り」の異名に反し、随分と情けない人物像であったことが推測されます。
そう言った記録からか、創作に置いての以蔵は、「かなり人間臭い人物でありながら、人斬りという冷徹な一面を持つ、表と裏の二面性のある人物」という描かれ方をされることが多いです。
さて、本作に置きましては、その二面性のある以蔵の魅力が「人斬りの手」という部分にギュッと集約されております。
弱き者に施しを与える優しき手と、天誅の名の下に人を斬る無慈悲で冷徹な手。
どちらも同じ人物の手です。
そして、いくら奇麗に拭っても、その手に染み付いた血の匂いは決して拭えない。
人斬りの業は一度負ってしまえば、二度と元には戻れない。
この手はもう汚れてしまったのだということに気付く以蔵の心境が、語られぬ部分からひしひしと伝わってきます。
激動の時代幕末を生き駆け抜けた一人の男、岡田以蔵。
人斬りの修羅ではない、人間としての彼の魅力を感じる本作、存分にお楽しみください。