生まれる年で強いられた命の選択。生き延びた者の言葉が胸に響く。

〝丙午の女〟
60年に1度巡る干支に生まれた女性。
〝この年に生まれた女性は男の運を吸い、家を潰す〟
そんな迷信により、生まれてくることを望まれなかった子どもがいた時代がありました。

迷信を信じる父から隠すために性別を偽り、男児として育てられた薫さん。
彼女は生き延びます。
やがては自分の子どもが家族を成す姿まで見ます。
そして現在は、自分と同じ丙午の干支で生まれてくる孫を思いやるのです。

彼女の眼差しは最後まで穏やかでした。
過去の日本の蒙昧さを怨むのではなく、孫への祝福の思いで、彼女の語りは終えられます。
そんな靭やかな心情が伝わる、優しい物語でした。

さて今年も丙午です。
はたして私たちは、いくらか進歩したのでしょうか?

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