誰もが心の中に持つ卵の殻。関係の変化で、みんな心に大きな『ひび』が?

 心というものが持つ「繊細さ」。それを強く感じさせられました。

 主人公の楓くんとイロハちゃんは高校生。でも、その年齢になってもなお、二人は幼い頃と同じように一緒にお風呂に入ったり、一緒のベッドに入ったりしている。

 それでも楓くんはイロハちゃんを「女」として見ることはしてはいけないと自分を強く戒める。
 イロハちゃんは「とある過去」があることで、卵の殻にこもるような状態になってしまっている。だからそんな繊細な心を砕かないよう、楓くんは「昔のまま」の接し方を続け、彼女を丁重に扱っていた。

 でも、そんな二人の日々に変化が起きて……。

 最終的に彼が目にしたものは、ひたすら心をかき乱されるようなものでした。
 なんとなく、「最後のアレ」が出てきたのはどういう経緯なのか、想像できてしまう気もする。

 楓くんは被害者に見えるけれど、「相手」からしたら、楓くんのしていたことが許せなかったのかもしれない。だからこそ、「優位」を示すために「あんなこと」をあえてしたのではないか。

 そんな想像も刺激され、楓くんやイロハちゃん、そしてもう一人の人物、誰もが心の中に「大きなひび」を持っているのではないかと考えさせられました。
 「青春の痛み」という言葉には収まりきらない、強い痛みを感じさせる作品でした。