思い出は黄白色の飲み物と、金の髪持つ友の歌声に彩られ。

人には見えないものが見える主人公は、歌声に誘われて死者の少年と出会う。
髪の色、使う言語、生きる世界。
なにもかもが違う彼と言葉と心を交わしていくうちに、世界はそう単純ではないことを、自分がまだ卵の中にいることを知る。

たくさんの人に出会えば出会うほど、多くの人の話を聞けば聞くほど、ひとつひとつの出会いの重要度は下がり、ひとつひとつの話の詳細を覚えていることも困難になるかもしれない。
いいことばかり、いい出会いばかりではないかもしれない。
それでも、殻を割って外へ出て、色んなアルコールやスパイスを混ぜて、「君だけのエッグノッグを作るんだよ」と、彼自身が教えてくれた飲み物になぞらえて、背中を押してくれた。

その出会いがあるから、彼の話を聞いたから今がある。
あのとき、卵を外側からノックしてくれたのは彼だ。
今度は話を聞いてもらう番だ。自分だけのエッグノッグを完成させて。

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