その卵は、人肌で孵化する。

「卵」という言葉が、ここまで不穏になり得るのかと驚かされました。

この物語が描くのは、暴力そのものではなく、それが生まれる前の、あたたかい工程です。

善意、正義、安心、連帯。

どれも否定しきれないものばかりなのに、それらが揃ったときに戦争が孵化していく。

語り口は終始静かで、だからこそ読み手自身の経験や記憶と重なります。

これは遠くの出来事ではなく、自分の足元で起こり得ることなのだと、気づかされる。


お題「卵」を、思想と感覚の両方で使い切った作品でした。

短くても、読後の余韻が深く残る一編です。おすすめします。

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