忘れかけていた記憶を、やさしく紐解くエッセイ

昭和の夏の匂いが漂ってくるような、懐かしくも少しビターな思い出話に引き込まれました。

子供特有の無邪気な残酷さと、それを包み込むような豊かな自然。そして、空白の記憶を「お母さんの仕業かも?」と推理していく展開がとても面白く、最後には「納得できる物語があればいい」とカエルくんたちにエールを送る結びに、大人になった著者の優しい眼差しを感じます。

事実よりも「自分の中の物語」を大切にするその感性がとても素敵で、読み終えたあと、自分自身の忘れかけていた記憶もそっと紐解いてみたくなる……そんなエッセイです。