言わせたい、でも急かしたくない。不器用な恋の続き

こちらは、『ヒーロー』という作品の番外編です。
この番外編は、甘いだけの恋愛エピソードではありません。
むしろ描かれているのは、「言葉にする愛」と「言葉にしない愛」の、その微妙で愛おしいすれ違いです。

付き合っているのに、ちゃんと愛されていると分かっているのに、それでも「言ってほしい」と思ってしまう。
その気持ちは決してわがままでも未熟でもなく、とても人間らしい感情だと、このお話は優しく教えてくれます。

翼の視点で描かれる心の揺れは軽快でテンポが良いのに、ふとした瞬間に胸を突いてくるリアルさがあります。
相手を思いやるからこそ踏み込めない。でも本当は聞きたい。
その葛藤がコミカルさの中に自然に溶け込んでいて、読んでいて思わず頷いてしまいました。

そして舞菜の存在がとにかく魅力的です。
多くを語らず、態度で示し、肝心なところで一気に心を持っていく……この距離感、この不器用さ、この言葉選び、「この二人だからこそ成立する関係性」が、丁寧に、そして説得力をもって描かれています。

さらに本編から続く仲間たちの空気感が、物語に温度を与えているのも大きな魅力です!
恋人だけで完結しない、友人や周囲との関係性の中で育まれる恋。
だからこそ、この番外編は、ただの後日談ではなく、登場人物達の人生が今も続いていることを感じさせてくれます。

静かで、優しくて、でも確かに胸が高鳴る。
恋をしている人にも、したことがある人にも、きっと刺さる一編です。
この世界の空気を、ぜひ多くの人に味わってほしいと思いました。
ぜひ、ご一読のほうをよろしくお願いいたしますm(_ _)m