これは記憶の物語。過去のアルバムをめくるように、お読みください。
- ★★★ Excellent!!!
時代は昭和30年代。作者さまが生まれた時代を非常に丁寧な筆致で描かれた作品です。
まだ日本は貧しく、技術進歩はまだまだ。今の時代に比べれば、不便なことばかりです。
トイレも水洗ではなく、どっぽんトイレ時代ですが、人びとのつながりは深く密接でした。
本作の魅力は、そうした細部のこだわりです。
路地裏の風景や商店街の喧騒、テレビから流れる流行歌、トイレの話、電化製品の話、筆者が生まれたときの産屋の様子。
古い時代を反映した物語は、どこか懐かしく、読んでいると昔のアルバムをめくり、一枚一枚と写真をみているような気持ちになります。
ネット社会で生きるわたしたちが置いてきた世界がここにあり、胸の奥に温かい気持ちが、じんわりとわきあがくるような作品。
どうぞ、お読みください。おすすめです。