毒だから食べられない? そんな摂理、人類は認めませんけど?

人は希求するのです。生と死に関わることを。
その二つは重なるほどに、人を狂おしく駆り立てるのです。

エロスとタナトスです。
だから死にギリギリ近い食べ物だって好んで食べます。
吸収できなかったり、粘膜ぶっ壊したり、代謝阻害したりする物質が人間は大好きなんです。

フグのもつ毒の毒たる卵巣。
それをわざわざ食べ物とする〝ふぐの子糠漬け〟とそれを完成させ継承している文化が本作では示されてます。

それは狂気でも間違いの結果でもない。
人の本質的な嗜好なのです。

社会学者、ロジェ・カイヨワは人の遊びの4つカテゴライズの一つに「眩暈/イリンクス」を設けました。

人はクラクラすることが大好きなのです。
ラリったりしたいのです。
それが毒と毒食いの文化となったのです。

本作はそこに至る人の行いの有り様をコミカルな空想劇として描きます。
とても笑える。楽しいです。
人の愚かさと、愛おしさが溢れているのです。
人間の本質を描く本作を、ぜひご一読ください。

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