秋の香りが縁をいざなう。

金木犀の香りは独特で、今宵も誰かの鼻をくすぐる。物語の主人公もまた、大都会で身をすり減らし疲れ切ったある日の秋に、その香りに誘われる。

そして公園に咲く金木犀の花が、彼女との待ち合わせ場所となっていく。キンモクセイの甘美な香りに彼の心はくるまれる。

その花言葉は「謙虚」と「真実」。恋は人を臆病かつ謙虚にし、彼にとっての真実は彼女の笑顔となる。

しかし金木犀はいつか枯れてしまう。その時、二人の縁も枯れてしまうのだろうか……不思議な秋の物語です。

誰にでも胸襟が開かれたような文章で読みやすく、金木犀のように甘くもかぐわしい物語が好きな方にオススメです。

ちなみに物語の結末につけ、作中でも登場する金木犀の花言葉を思い浮かべます。

それは「陶酔」である、と……。

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