地獄の空を泳げ、燃え盛る火群の如く。

さすがというべきか。相変わらず、筆致が上手い。
冒頭、白紙で踊る紅い筆が金魚へ肉薄していく一連の描写は圧巻。流麗でありながら、視界にドロリとした血の粘度が残る。静の中に狂気の動を孕ませる表現力が凄まじい。
土着的な死の気配が、金魚の生と絡み合う独自の世界観も研ぎ澄まされている。
虚を突かれたのは、終盤の火の使い方だ。水に生きるはずの金魚を地獄からの解放を象徴する燃える鱗として空へ放つ感性。あの火群は実存を否定された隼人の叫びそのものだ。
絵が絵を救う。その残酷なまでの美しさに、完全にやられた。
読み手の心に消えない火傷を残す、地獄と極楽の物語。

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