履き慣れたパンプスなんて、今夜くらい脱いでしまおう

就活の自己否定と恋人からの圧迫に息詰まる深月が、世間の物差しからズレた相手との出会いによって、自分を認め直していく過程が鮮やか。窮屈なパンプスを脱ぎ、変なパフェや心地よい歌声に触れて心が解ける筆致には抜群のセンスがある。
他人が強いる正解に自分を合わせるのではなく、歪なままの自分を愛する。そんな自己分析の再定義とも言える結末が深く刺さる。読後、足元が軽くなるような一作をあなたに。