「不味くない」——その一言に、どれほど救われただろう

星空の下で泣きながら過去を語る場面に、心を掴まれました。

血が不味いから棄てられ続けた。使用人としていくら優秀でも、吸血鬼にとって「血の味」がすべてだから。その残酷な構図の中で、主人公・光莉が二年間どれほど傷ついてきたかが、丁寧に描かれています。

「頬に瞬いた生温かい流星」という涙の描写、「まるで降り注いだ一筋の流れ星が心に穴を穿つように」という比喩。横川の鉄道文化村で寝転がりながら星を見上げる二人の構図が、とても映画的で美しかった。

そしてクリスカ。吸血鬼の名家令嬢なのに鉄道を前にすると止まらなくなるお茶目さと、「私達のせいで傷つけてしまって」と頭を下げられる誠実さ。このギャップに惹かれます。

最後の「あなたの血、皆が口々に噂するほど不味くない」という言葉。嘘でも気休めでも、否定されなかったことがどれほど救いになるか。その心理描写に胸を打たれました。

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