拝啓、幻想文学へ——「綺譚蒐集者」という在り方

風見鶏に突き刺さった少女の首。
眼窩には蜘蛛の巣。

猟奇的な幕開けに息を呑む。

だが描かれるのは単なる怪奇ではない。
閉じた社会の空気、役割に縛られた人間の弱さ、見ないふりをされた罪。

「偉人に毎日料理を作っていた人の名前は歴史には残らない」
——ルナの言葉が静かに刺さる。

彼女は探偵ではなく「綺譚蒐集者」。真実を暴くのではなく、話を集め、記録し、時に幕を引く。その距離感が、物語に独特の余白を与える。吸血鬼のメイド・ズデンカとの掛け合いは軽妙でありながら、どこか切ない。

幻想と現実の境界で、忘れられた者たちの声を拾い上げる物語。

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