最高の読後感が約束されている作品。終末の中の光
- ★★★ Excellent!!!
はぁ……。読んだあとに、こんなため息をつくことになるなんて。
このため息は、言葉にできないいろんな感情が空気になって出たやつです。もしこれが紙の本だったらその場で抱きしめてた。本当にこの物語を抱きしめたい。登場人物を抱きしめたい。心からそんな感情が湧くんです。
これは人類の大部分がウイルスによって滅んだ世界の物語で、主人公の視点で語られる日常の様子なのですが、繰り返しの毎日生活の中で少しずつの変化。本人には悲壮感がないのに、随所に薄く感じ取れる悲しみとか寂しさがずっと横たわっていて、何度も繰り返される「主婦でよかった」の言葉が、読者をも支えるんですよね。本当に主婦で良かった、と。
衝撃的な事実も淡々とした表現の中で明らかになるのですが、フラットな感情の世界のなかに、切なさとやさしさと、なんとも愛おしい世界のすべてに対し、情緒がぐちゃぐちゃにされる感じ。
正直読んでいてうっすらと涙してしまったのですが、不思議な感動の涙でした。哀しさとか寂しさとかの要素も含まれるけど、人に残ったやさしさに対する安堵、主人公の真摯な姿とか、いろんな感情のごった煮の涙。語彙力がなくて「感動した!」としか言いようがないのですが、感動という言葉の中にいろんな色がつくというか。
読了後に何度も、この物語を反芻してしまう。この作品の素晴らしい部分を簡潔に表現できる言葉がどうしても出てこなくて、これはもう読んだ人だけが体感できる特権かも。言葉にならない、まとめることがこんなにも難しい、しかし幸せとも感じる心地よい気持ちが胸に溢れるなんて、滅多にないのことではないでしょうか。
リズミカルな筆致、読みやすい文章、すばらしい描写力で読んだ事を絶対に後悔しない作品。ぜひこの感動の体験をしてみてほしいです。