家族の絆の尊さ、不思議さ。ずっしりと読み応えのある短編。

パンデミックにより人が消え、廃墟のような街でひとり暮らす主婦。夫と娘を失い、今はロボット犬だけが家族。朝起き、朝食を準備し、洗濯をし、彼女は嘆き一つこぼさず変わらぬルーティンを回す。
なぜ彼女はひとりだけ身体に不調もなく、これほどに淡々と日々を回すのか?読み進めるうちに、次第に彼女の不自然さが不気味さに変わっていきますが、実は彼女は——。

彼女が感情を持たないからこそ、夫と娘が生前に彼女に残していった言葉や記憶が一層切なく読み手に響きます。
そして、家族以外の人々にとっては、家族の記憶などボタンひとつでリセットされてしまうレベルのものなのだ、という事実も、重い痛みとなって読み手の胸を打ちます。

家族の絆の尊さ、不思議さ。
さまざまな感情を揺さぶる、ずっしりとした読み応えのある短編です。

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