ヤンデレ女神の異世界で精神科医が挑む治療ファンタジー

この作品の独創性は、「精神科医療」を戦闘能力として異世界に持ち込んだことです。

主人公カイラスが持つ権能『処方箋(プラエスクリプティオ・マギカ)』は、

体内で向精神薬を生成し投与できる能力。

これが剣や魔法に代わる彼の武器になっています。

しかし本当の強さは、前世で培った精神科医としての診断力と治療技術です。

強迫性障害で剣が抜けなくなった剣姫リセラ、

認知の偏りで人の心が読めない天才剣士レオン

彼らの症状を丁寧に観察し、適切な介入を行う主人公の姿は、まさに医師そのもの。

専門用語も自然に織り込まれ、作者の知識の深さを感じます。

そして何より面白いのが、ヤンデレ女神カルミナとの関係性。

彼女の愛着障害すら治療対象として真正面から向き合う主人公の姿勢は、医師としての矜持を感じさせます。

しかし治療すればするほど依存は深まり、執着は重くなる。

この皮肉な構図が物語に独特の緊張感を与えています。


顔面偏差値全振りという一見コミカルな設定も、実は美貌が弱点になる世界観で生きる意味を持ちます。

容姿と引き換えに得た権能の痛み、そして女神の歪んだ愛。

すべてが計算されたバランスで配置されています。

従来の異世界ファンタジーにはない切り口で、心の病と向き合う物語。

この先、主人公はどこまで患者たちを救えるのか、

そして女神の愛はどう変化していくのか、

一瞬たりとも目が離せません。おすすめします!

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