概要
母の亡骸に縛り付けられ、暗い海を漂っていた幼子ビビは、冥界の舟人によって奇跡的に命を救われる。
しかし、生き延びた先に待っていたのは、顔も知らない母の過去が残した闇だった。
旧大陸の時世に翻弄された無力な母の咎とは何か。
母が落とした小さな血の染みは、ビビや周囲の人々を巻き込んで、やがて国をも揺るがす波乱となってゆくのだった。
――これは、ある母娘の数奇な運命を軸に織りなされる花色の群像劇。
Tache : Chronicle of the Old Continent
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!まるで実際に体験しているかのよう
まず最初に思ったのは、文章がとても読みやすいということです。
それはくだけた文体で読みやすいというわけではなく、ちゃんと異世界ファンタジーの世界観を作り出していて、なおかつちゃんと読み手に景色を伝えられるものになっています!
これって結構難しいことだと思います。『異』世界というだけあって、現代とは異なる世界を描くのですから、油断すると読み手を置いていってしまうような物語になりかねないと思います。
その点、このお話は誰も置いていかない、みんなにお勧めできるものだと感じました。まだ序盤ですが、展開も面白くて、無理もなく、自然に続きが気になるものになっています。めっちゃ面白いです。
ビビがど…続きを読む - ★★★ Excellent!!!静謐で、残酷な美しさをもって描かれた重厚な作品
冒頭、母の亡骸と共に海を漂う幼いビビという強烈なイメージから物語は始まり、否応なく深い運命の渦へと引き込みます。
派手な展開に頼らず、淡々と積み重ねられる出来事の一つひとつが、やがて大きなうねりとなっていく構成が素晴らしいです。
文章は終始繊細で静かですが、その奥には痛みや後悔、愛情といった感情が濃く滲んでいます。
息を呑むほど緻密でありながら決して説明過多にならず、物語の余白として機能しています。
人々の群像も豊かで、誰もが血の落とした影を抱えながら生きていることが静かに伝わってきます。
運命に翻弄される物語でありながら、その視線は個人を超え、世界や時代へと広がっていく。…続きを読む - ★★★ Excellent!!!登場人物の心の揺れ、葛藤が情感ゆたかに書き込まれた美しい物語
この作品を異世界ファンタジーと片付けるのはもったいないと思ってレビューします。
少女期、私を読書好きにしてくれたのは、シャーロック・ホームズやエドガー・アラン・ポーのようなミステリーだけではありませんでした。
例えば、アンを迎えたマリラの葛藤。
精霊の守人のバルサの生きざまでした。
この作品を呼んで、久しくそのような読書をしていないことに気付きました。
上流階級の傲慢さ、養い後を慈しむ母の姿。
不思議な運命を背負った少女。
日常に潜む「悪意」や「心の闇」を、市井の人々の視点から丁寧に描く情感あふれる作品で、夢中になって読めます。 - ★★★ Excellent!!!独創的な美しい異世界で紡がれる、重層的で静かな群像劇
母親の亡骸にくくりつけられ、海を彷徨っていた少女ビビ。
奇跡的に助けられた彼女には、恐ろしい刻印がなされており……
謎めいた少女の存在を中心に、最初は比較的静かに展開していく物語は、読んでいくうちに加速度的に面白さを増して、やめ時を失います。愛憎劇などがお好きな読者さんなら、止まらなくなること請合いです!
特筆すべきは、人物造形の見事さです。
美形、悪人、俗物、善人等々様々な人々が登場しますが、皆ご都合主義や表層的な性格付、言動ではなく、「ああ、こういう人いるだろうな」とか「こういうことあるだろうな」と思わせるキャラ造形が見事です。
そんな人々が生み出す物語だからこそ、実に説得力があり胸…続きを読む