魔力が重視される世界で生まれ落ちた主人公。
魔王復活が予言され、世界は益々魔力が重要視されていきます。そんな中、主人公である「ノアコアード・アーダ・アキアル」通称"ノアコ"の国
―アキアル王国も例外ではありません。
そんなノアコはアキアル王国第一王女。
小国と言えど、王族である彼女は生誕時から
「魔力」を期待されるも――
測定にて「魔力無し」判定が下ります。
10代に成り立てのノアコは必要とされない場所=王宮から飛び出し、城下を歩いた影響で興味を得た"商い"に身を投じる決心を固めたのですが…。
はじめは、「魔力以外」で自身の価値や能力を高めるために。そして、反対されないから。
お金を稼げれば、今後の役に立つから(血縁の叔父の面倒を見る気満々)という理由でした。
それが徐々に家族を含め大切な人達や仲間(商売に関わった人々も含む)や国の安寧のためへと目的が徐々に追加されていきます。
国の平和があって、商売が成り立ち。
商売の発展あって、国の経済は潤い、
安寧へと繋がる。
そういう本質を地で行く、本作品。
魔道具や遺物に、希少素材を取り扱うお店
現代で「小売り業」にあたる仕事をノアコは着手し始めます。店主やその家族に支えられながらも自身で商売とは、何かを掴もうとします。
はじめは初歩的ミス(物品破損や帳簿のミスなど)でお店で損害を出してしまうも、ミスを活かし、顧客の観察と店の売上げ物品の把握などを通してニーズを汲み取れるようになります。
↑これで序盤です。商人1年目の主人公の姿です
この様に、少しずつ商人として成長していく
主人公に魅力を感じる人も多いのではないでしょうか。
更に、成長したノアコはより慎重さと思い切りの良さ――
一見矛盾しているようにも感じられる性質を上手く商売に活かしていきます。
商談の時には、事実確認を優先させて一度持ち帰ったりもする。(噂話を鵜呑みにしない)
など。
一度、ついてしまった店(もしくは、ブランド)のイメージを覆すのは難しいこと。また、それをコントロールすることも難しい。
店やブランドの信頼――商いには「信頼」が第1であること。それらを自覚し、どうしていくのかを考え実行に移すノアコ。失敗もあるけれど、
周囲との関係を通して自身の力だけでは商いが出来ない事を何度も経験していきます。
商売は「ギブ・アンド・テイク」
利益を出さなければなりません。
しかし、利益ばかりを追い求めては結局大きな利益へと繋がりません。
与えすぎず、欲張り過ぎず。
バランスを見極めることが重要です。
そこら辺の"匙加減"は商売だけでは無く、人間関係や国の政にも言えることではないでしょうか。
ファンタジーでコミカルに、だけど確実に現代とリンクする本作品。
こんな方にオススメ!
では無く。
色んな方に読んで欲しい!
そう感じられるファンタジーだと思います。
高貴な身分の令嬢。魔術と超科学技術の並立。キャッチコピーとしては一般的です。しかし重大な点が。
魔術が各人の個の能力に由来することに対し、科学は組織運営や社会の制度と生産力が基礎となります。あるはずの価値観の対立を、本作は露わにします。超科学技術に基づく兵器を持ち込み個人で無双ではすまない、イデオロギー対立。
技術体系も価値観も衝突する戦場で、少女は成り上がります。周囲の土地も、人間関係も、地雷が多数埋まっています。緊張の中を歩きます、慎重に、勇敢に。
慎重さと勇敢さを両立させる必要があることは、小説としての本作も同様です。バランスを取りつつ、無茶をして歩を進める、緊張感が続きます。
ヒリヒリします。その言葉が似合います。
王女ノアコアードの姿がとても丁寧に描かれていて、彼女が「無能」と蔑まれながらも一歩を踏み出すシーンに強く共感しました。
魔法が支配する世界で、魔力を持たないからこそ見えてくる“別の可能性”。
その視点のユニークさに惹かれます。
さらに、先史文明の叡智との邂逅が物語を一気に広げ、スローライフを夢見る王女の小さな願いが、やがて世界規模の挑戦に結びついていく流れは壮大でいて胸が熱くなります。
描写が細やかで、ノアコアードの心情から世界観まで自然に伝わってくるのも大きな魅力です。
「無能」と言われた少女が、誰も知らない力を手にし、世界を変えようとする――そのギャップと丁寧な描写に引き込まれました。
魔法しかない世界で「魔力なし」と蔑まれていた王女・ノアコが、
超科学の叡智を手にし、商人として一歩を踏み出す――
その芯の強さと静かな覚悟に胸を打たれました。
先史文明の遺物(クオンタム・ブレイン)というミステリアスな設定と、
日常の商売修行の描写が見事に噛み合っていて、
ファンタジーでありながら“地に足ついた成長物語”として読めます。
周囲との駆け引きだけでなく、ノアコ自身の内面にも丁寧な目が向けられていて、
「この子の未来を、本気で応援したい」と自然に思えるキャラに出会えました。
今後、魔法帝国やライバル商人との対立が激しくなっていきそうで、続きを読みたくてたまりません!