さよならの数だけ、麦は黄金に輝く
- ★★★ Excellent!!!
詩を詠むかのような美しい情景描写、穏やかで確かな筆致の中に、経済・技術・因果関係という根幹が、説明ではなくストーリーとして描かれ、物語の中でキャラクターだけでなく社会が、確かに息をして動いている。そのリアリズムに没入する。
生物学的・地学的根拠がストーリーに違和感なく、しかし精密に組み込まれているため、アルトゥスの知性・推論・キャラクターの言動に一貫したロジックを見る。
長命・短命という種族間差異の埋められない距離感への儚い抗い、友情を尊重する成熟した男女の在り方、すべてが品格のある読後感に繋がる。
プロの技術を官能的ともいえる語彙で彩り、美しい情景とともに魅せられたウイスキー派の私は、旨い麦酒を飲みたいという浮気心を掻き立てられる────。