概要
発句は、客じゃ。――枯野の庵で、亡き歌詠みたちと巻く一巻。
枯野の果ての庵に、一通の文が届く。
「発句は、客じゃ」
戸を叩いたのは、旅装の痩せた年寄り――旅に病んで夢は枯野をかけ廻る、と一句だけ残して、雪の中へ消えていった。
以来、庵には、季ごとに、客が来る。
朽ちた船を悔いる将軍。話に埋もれた小町。歌を捨てた帝。愚痴で三位に上った老武者。忍ぶ恋の斎院。手毬の僧。最古の声。旗を返しにゆく将軍。君と呼ぶほかを知らぬ歌人。石をもて追われた青年。
名は、誰も、名乗らない。
黒い椿の筆を持つ少女が、下りた句だけを、書き留めていく。
亭主は、書物の山に埋もれたセンセ。
酌をすれば右に出る者のない女。
寒い寒いと言うている、貧乏神。
そして、無口な、福々しい大男。
一句が付くたび、庵の外の季節が、動く。
枯野に雪が降り、雪が解け、菜の花が咲き、蠅が飛び、
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!真骨頂
この創作能楽のシリーズは、作者様の真骨頂かと思っております。私の見方が浅いのかとも思いますが、この作者様以外にこのタイプの作品をお見掛けしたことがありません。
これは勝手な思い込みですが、黒椿シリーズですので登場人物はある程度共通しているのでは、と思います。
とすると、女は彼女、翁はあの神様、福々しい大男はあちらの神様か、など。(翁にコメントでヒントを頂いて全部つながった次第です)
そこへ、各時代の歌仙と呼ばれた人物たちが立ち寄る。ある意味、時の流離人のようなホスト側と一緒に読者も時間旅行をして歌の名手と神たちのやり取りを垣間見るという贅沢な時間を過ごす。
完全な私の勝手な解釈ではあります…続きを読む