概要
玉砕できなかった男が、生き延びる。これは罪なのか、罰なのか。
昭和二十年、レイテ島。玉砕を命じられた小隊は、次々と死んでいく。
生き残ったのは、答えを出さなかった者たちだけだった。
なぜ徴兵されたのか。なぜ命令に従うのか。なぜ人間なのか——鴨下衛一等兵は、あらゆる問いの前で立ち止まる。答えを出さないまま、仲間を埋め、銃を置き、収容所で目を覚ます。
わからないまま、腹だけは減り続ける。
新潟の祖母が作った冷たい素麺、東京で仕えた作家との対話、戦友たちのささやかな癖——生き延びた者の記憶は、戦争の意味ではなく、日々の断片としてよみがえる。
玉砕を否定するでも、肯定するでもなく。ただ、生き延びてしまった一人の男が、判断を保留したまま次の一歩を踏み出すまでを描く、静かな戦争文学。
生き残ったのは、答えを出さなかった者たちだけだった。
なぜ徴兵されたのか。なぜ命令に従うのか。なぜ人間なのか——鴨下衛一等兵は、あらゆる問いの前で立ち止まる。答えを出さないまま、仲間を埋め、銃を置き、収容所で目を覚ます。
わからないまま、腹だけは減り続ける。
新潟の祖母が作った冷たい素麺、東京で仕えた作家との対話、戦友たちのささやかな癖——生き延びた者の記憶は、戦争の意味ではなく、日々の断片としてよみがえる。
玉砕を否定するでも、肯定するでもなく。ただ、生き延びてしまった一人の男が、判断を保留したまま次の一歩を踏み出すまでを描く、静かな戦争文学。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!玉砕せずとも、心は死ぬ。
確か、上野だったと思う。
当時は濃い闇とむやみな明るさが溶け合えず、ただ雑多に混ざっているだけだった。
駅付近の路上に、筵を敷いて座っている片足のない物乞いの男がいた。
無関心な、もしくは無関心さを装う人々は、皆一様に視線をそらしていたのを記憶している。
幼い私を連れた祖父もそうだった。
暴力で解決するのは、戦争だから。
暴力を振るうだけでは解決できなくなってからは、自らの命で。
それが是とされた時代だ。
玉砕せずとも、心は死ぬ。
鴨下の命を現実につなぎ止めていたのは祖母の素麺か、はたまたレイテの赤土か。
鴨下の、そして作者の問いかけに、私たちはいつまでも考え続けなければいけない。