まるで夜の静けさの中、自分だけ薄い膜の向こう側に立ってしまったような、不思議な余韻の残る物語でした。廃団地という舞台は荒れ果てているのに、そこにいる四人の会話や息づかいはどこか温かくて、読み進めるほど現実と物語の境界が曖昧になっていく感覚があります。 怖さもあるのに、それ以上に「人が抱える弱さ」や「誰かを大切に思う気持ち」がじわりと胸に沁みて、読み終えたあともしばらくスイと遠野の背中を追ってしまいました。青春のまぶしさと、見えないものへの優しさが静かに響く一作です。
むしろ社会における末端へと行かざるを得ない人々。潮風が毟るAヶ丘団地。打ち捨てられ、腐食の進む建物にすすり泣く声。ホラーとしての舞台設定はお見事です。幽霊が見えて、想いのわかる遠野から聞かされた幽霊の真実。想いに寄り添おうとするスイと、自信の正義感を貫く遠野。違った方向の二人で辿る心霊スポット探訪。人間ドラマも添えられて。
心霊ホラーと青春の絆が絡み合う短編です。廃墟の悲劇的な話を通じて、主人公と遠野の複雑な関係性が切なく描かれ、読み終わりに余韻が残ります。
本作は肝試しというありふれた導入から始まる短編ホラーである。団地という生活感のある舞台設定、シングルマザーが我が子と無理心中をした現場という現実にもありそうな状況設定、それらが地続きの恐怖として立ち上げている点が秀逸です。序盤は登場人物達の軽いノリで始まりながら、後半はリアルをつきつける展開により残酷に際立っています。ホラーというよりも人間ドラマの側面が強く、ホラーが苦手な方でも十分に楽しめる作品ではないかと思われます。短編ですので、さらりと読めますので、みなさまもご一読されてはいかがでしょうか?
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