概要
「ここでは肉体という名の、全裸の不動産だけが査定される」
衣服や資産ではなく、限界まで磨き上げた肉体の定数のみで人間を査定する聖域「港区」。仕立てに百万円を要する高級スーツを脱ぎ捨て、全裸の彫刻「アントニウス級」として入区した「私」は、支配レイヤーの女・オクタヴィアヌスと出会う。衣服なき街での高密度な皮膚の対話、そして品川への追放という恐怖。自己を定数化する夜の規律に身を委ねる一方、昼の「私」は富裕層の衣服という記号に埋没し、自己を見失っていく。夜と昼、動的な身体と静止した思考の差延の果てに、「私」が管理局の最後尾から逃げ出したどり着いたのは、いかなる地図にもない、放棄された名もなき港だった。
他者の審美眼をすべて解体した暗闇のなかで、剥き出しの「石」となる男の硬質な独白。
他者の審美眼をすべて解体した暗闇のなかで、剥き出しの「石」となる男の硬質な独白。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!圧倒的な比喩の果てに、自分自身へたどり着く硬質な独白
「肉体を査定する港区」という、あまりにも強烈な設定にまず圧倒されました。
衣服や資産ではなく、磨き上げられた身体そのものが価値として測定される世界。
その異様さは一見すると笑ってしまうほど極端なのに、読み進めるうちに、現実社会にある「見た目」「肩書き」「ブランド」「他者からの評価」への皮肉として響いてくるのが興味深かったです。
特に印象的だったのは、徹底して硬質な語彙で押し切る文体です。彫刻、定数、構造、記号、せん断といった言葉が繰り返されることで、主人公の思考そのものがひとつの建築物のように立ち上がっていきます。その言葉の密度が、この作品ならではの迫力になっていました。
夜の港区では肉…続きを読む