「肉体を査定する港区」という、あまりにも強烈な設定にまず圧倒されました。
衣服や資産ではなく、磨き上げられた身体そのものが価値として測定される世界。
その異様さは一見すると笑ってしまうほど極端なのに、読み進めるうちに、現実社会にある「見た目」「肩書き」「ブランド」「他者からの評価」への皮肉として響いてくるのが興味深かったです。
特に印象的だったのは、徹底して硬質な語彙で押し切る文体です。彫刻、定数、構造、記号、せん断といった言葉が繰り返されることで、主人公の思考そのものがひとつの建築物のように立ち上がっていきます。その言葉の密度が、この作品ならではの迫力になっていました。
夜の港区では肉体という記号に縛られ、昼の世界では高級な衣服や社会的な記号に埋もれていく主人公。どちらにも本当の自分を見出せなかった彼が、最後に名もなき港へ逃げ、自分自身の輪郭を取り戻していく流れには、不思議な解放感がありました。
奇抜で、笑えて、けれど最後には自己存在について考えさせられる。独特な読後感を残す作品です。ぜひ一度、この硬質な世界に触れてみてください。