千の言葉が紡ぐ小さな奇跡
- ★★★ Excellent!!!
医師の診断は時に冷淡で残酷です。
それはこれまでの医学のデータや医師自身の経験に基づいた冷たい言葉の羅列。
患者本人や家族への思慮に欠け、思いやりや感情を排した事務的な業務の一環に過ぎないのかもしれません。
本作では医師の下した診断とその後の経過を示した予後という残酷な現実を医療サイドから突きつけてくるのです。
「この子は喋らないかもしれない」
放たれた言葉がナイフのように心を深くえぐります。
しかし、患者である生後半年の小さな命と家族はそれらの冷たい言葉の現実と真摯に向き合い、温かな愛情と可能性の言葉でこれを乗り越えていくのです。
そして四年の歳月が流れたある日、ついにその時を迎えます。
「まま」
初めて発した言葉。
それは医師の言葉を超えた小さな奇跡――できることが一つ、そしてまたひとつとして増えていく。積み重ねていくその営みはやがて、かけがえのない大きな軌跡となって心に温かな余韻を残すことでしょう。
千の言葉が紡ぐ心を揺さぶる感動作。ぜひ手に取ってみてください。