喪失感に胸が締め付けられました。ありがとうございました。
例えそれが雑音であっても、その人が存在する証だったのか
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(213文字)
こころが温かくなりました。詩のように流れる文体。音……雑音と思っていたもの全てが、その人の温かい存在であり、アイデンティティ。母を好きではなかった私。でも毎日ご飯作ってくれていた。お弁当持たせてくれた。これがどれだけ大変なことか……。離れてみてわかる。感謝することを思い出させてくれる作品。
「音」の不在を通して描かれる喪失感が、とても静かに、深く響きました。日々の雑音が安心そのものだったこと、その消失が心を締めつけること。淡々とした言葉に、痛みがいっそう浮かび上がってきます。誰かを失うとき、失われるのは命そのものだけではありません。音が消え、匂いが消え、冷蔵庫の料理、届く郵便といった痕跡までも、確かに存在していたものが消えていき、その過程がまた新しい喪失として迫ってくると感じたことがあります。作者はその喪失のうちのひとつを「音」として捉え、丁寧に描かれているのだと感じました。静けさの中に残された愛情と孤独を照らすような一篇。
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(69文字)
静かに物語は進行するけど、その場面ごとに起きた音を逃すことはない。この物語に響く音は全てなつかしく切ない。最後に音がこの物語の場面を彩っていた事を改めて知る。秀逸な展開と思いました。
日常の生活音。普通の暮らしの中の音の情景は、在りし日々を思い起こさせるのです。本作は、作者である五五五 五さんの追想を記したエッセイです。静かな生活のなかで思い出の中の音が再出します。静穏な日々のなかに透明な哀しみが染みる。その有様を文章へと綴られているのです。穏やかで、心に残るエッセイでした。
「静謐」という言葉が内包する深さと、孤独の重みが丁寧に描かれており、失われたものが音として語られる構成が実に秀逸です。読み終えた後も余韻が長く残り、静かに心を揺さぶられる一篇でした。
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