静けさの余白に
- ★★★ Excellent!!!
「音」の不在を通して描かれる喪失感が、とても静かに、深く響きました。
日々の雑音が安心そのものだったこと、その消失が心を締めつけること。
淡々とした言葉に、痛みがいっそう浮かび上がってきます。
誰かを失うとき、失われるのは命そのものだけではありません。
音が消え、匂いが消え、冷蔵庫の料理、届く郵便といった痕跡までも、確かに存在していたものが消えていき、その過程がまた新しい喪失として迫ってくると感じたことがあります。
作者はその喪失のうちのひとつを「音」として捉え、丁寧に描かれているのだと感じました。
静けさの中に残された愛情と孤独を照らすような一篇。