ロードバイクを題材にした、ニッチながらも読みごたえのある青春小説。

 ロードバイクを軸に据えた青春再生譚として、静かで確かな熱量を放つ一作です。過去の挫折を抱えた青嶋八一が、高校という新たなステージで再びペダルを踏み出す姿は、痛みを知るからこその優しさと覚悟を感じさせます。冒頭から描かれる自転車や走行感の描写は非常にリアルで、専門用語も自然に物語へ溶け込み、読者を一気に世界へ引き込む。個性豊かな仲間や先輩たちとの掛け合いは軽快で、部活特有の緊張感と期待が瑞々しく伝わってくる。競技の高揚感と人間関係の機微が丁寧に積み重なり、「前を向く」ことの意味を、呼吸するように静かに教えてくれる青春小説といえます。

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